それは詩だけ

生と死は
哲学者か
年を取った詩人が考えればよくて
若者はただ謳歌するべし
と指導される
この生と死
ここに否定されたのは

 

あ、ぽかりと浮かんだ
ああ、ぷわりと沈んだ

 

ただそこにあるものとして
そこにあるものをそのまま
享受して得る愉悦のままに
楽しいまま嬉しいまま
生死を消費していく
そうあるべきなの

 

短い生の旅路で
費やした時間の分だけ
より輝いていけるものがあるとして
造形に手をかけて嘲笑を受けて

 

路傍の石のように
そこにあったと
残る
私であったもの
それは詩だけ

波打ち際の彼女

腹立ちまぎれに
太陽に目がけて投げ入れた叫びは
放物線をかいてじゅっと蒸発し
陽と一緒に水平線に飲まれて消えていく

 

海辺の彼女は
「だからいったのに」というそぶりを見せ
つまらないものを弄ぶように
波を爪先でつついている

 

暮れる陽が段々と輪郭を揺らし
肥大化した神経が高ぶり
また叫びだしたくなってしまう
細い後ろ姿が酷く恐ろしい何かに変化する
瞬間がそこまで来ていた

 

薄闇にぼやりと浮かぶ
分からないそのものは
ついにはこちらをじっと見て

 

私が恐れる言葉を発する前に
波がさらっていってしまった